魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
今日何度目かになる溜め息を付いた時、凛の肩にポンッと手が置かれる。
最近、気配や物事に敏感になっている凛はあからさまに肩を揺らす。
ビクついた彼女に、後ろに立った彼は申し訳なさそうに言う。
「悪い。驚かせたか?」
「……幹久先輩。」
幹久を見た途端凛の目にはジワリと涙が浮かび上がる。
泣きそうな顔で自分を見上げてくる彼女に驚きながらも幹久は真剣な顔で聞く。
「何かあったのか?」
その問いに躊躇った凛はおずおずと俯く。言いにくいことだと幹久は瞬時に理解した。
無理に聞き出すことはしたくないが、泣きそうな凛を放って置きたくもない。そう考えた時、幹久はふと有ることに気が付いた。