魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「分からない、です…」
何で制服が無くなったのか検討も付かなかった。
あの瓶も、郵便物も、手紙も。ただの嫌がらせ―――?と凛は考えを巡らす。
いまだに自分の置かれている状況がよく理解出来ずに居た。
「怖いか?」
「え…?」
「震えてる。」
「――…っ。」
それは無意識の震えだったのだろう。幹久に指摘され、凛は自分が震えてることに漸く気がついた。小刻みに震える両手で生温いココアをギュッと握り締める。
「怖く、ないです。」
「……」
「“私に”迫りくる恐怖は怖くないです。でも“誰かに”迫りくる恐怖は凄く怖い。それが私のせいなら尚更…」
「……」
「私のせいで誰かが傷付くことが一番怖いんです。」
そう言って凛は目を伏せた。