魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





それは本音だった。しかし精一杯の強がりでもあった。本当は自分に迫りくる“何か”に凄く脅えていることに凛は気付いていた。


けれど幹久の手前言うことは出来なかった。本音を溢すと心が脆く崩れてしまいそうだったから――――――…。自分が恐怖に耐えられる程強くない事を凛は充分理解していた。だからこそ内に秘めた。恐怖も。不安も。本心も。





「……」





それを幹久は黙って聞いている。


ただじっと静かに。


無言重圧に耐え切れず、ベンチから立ち上がる凛。
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