魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「俺じゃ…」
「え?」
小さな呟きが聞こえなくて凛は聞き返す。
どこか幹久先輩らしくない。普段ならハッキリ、ズバズバと物申すのに。と凛は不思議がる。
幹久は一旦間を空けると、今度は澄み渡る声で言った。
「俺は、頼りないか?」
自分より小さい凛を見下ろして、幹久は静かに問う。声を荒げることもなく怒鳴ることもなく、ただ静かに凛に言う。
「俺じゃ駄目か?」
「幹久せんぱっ、」
「俺は凛の支えになりたい。」
凛の慌てる声を聞かず、掴んでいた手首をそのまま引っ張って抱き締めた。思った以上に小さな彼女を強く抱き締め、離さない。