魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「凛に死なれたら困る」





ボソッと耳許で呟かれた。





「凛が死んだら俺は生きてる理由がない」

「…あるよ」

「ない」

「、……」

「殺したいのは凛じゃない。もっと邪魔な奴を排除したい。凛と俺の邪魔をする奴等を根絶やしに、」





耳許で囁かれる言葉が冗談だとは到底思えなかった。口を紡いだ捺に尚更、恐怖心を煽られる。



じわじわと恐怖の波が押し寄せた。


波に浚われそうになり、無意識に捺の背に手を回す。しがみつくように。


凛は恐怖のあまり、恐怖の元凶でもある捺のワイシャツを掴んでしまった。
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