魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「紗枝はどれだけ自分に利用価値があるか見極めるだけです。利益になるなら仲良くしておいて損はないと思います。凛先輩の血縁者なら、尚更じゃないですか。」
ニコッと笑った紗枝は、華が散るような笑顔から一変、見るからに悪に染まった目色に変える。
「でも隙有らば―――…ですけど。」
紗枝は続きを言わなかった。しかし響には分かった。目の前に居る女が何を言おうとしていたのかを。“邪魔者は排除”この定義からすると紗枝が考えていることなど手に取るように分かる。
「オメエ、やっぱ性格悪ぃわ。仲良くなる以前に、消すこと考えてりゃあ世話ねえぞ。」
「うふふ。ポテンシャルの高さですぅ。」
「ただの悪知恵だっつうの。」
呆れたように紗枝から目を逸らした響は溜め息を付くと、空を見上げてタバコを吹かす。