魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「紗枝は要領が良いんですよ。響先輩を見てると焦れったくて苛々します。自分の欲望に忠実過ぎるあまり、行く道は茨です。」
「それが俺だからね〜。」
「もっと制御したらどうですか?傷付けてばっかりじゃないですか。何なら響先輩も弟と―――…」
「嫌だね。」
言葉を被せた響は嘲笑う。この男はとことん自分の道を進む。善悪関係なく、欲望の赴くままに身を委ねるのだ。
「ハッ。何が悲しくて馴れ合わなきゃなんね〜んだ。あの弟とやらにペコペコするくれえなら、ここから飛び降りるわ。」
響の言う“ここ”とは屋上のこと。そこまで毛嫌いしているのか、と紗枝は溜め息を付いた。少し我慢すれば楽に事が進むのに。その我慢さえ出来ない響を、紗枝は見限る。