魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「やっぱり響先輩とは馬が合いませんね。」
「奇遇じゃね〜の。俺もそう思ったところだ。」
「価値観が違いすぎます。折角、紗枝が効率の良い道を教えて上げてるのに。」
「余計なお世話だ。」
紗枝はニコニコと。響はヘラヘラと。笑いながら睨み合う。
このとき互いに『やっぱりコイツ、気に入らねえ。』とドス黒い心の中で毒を吐いていた。
「紗枝はもうそろそろ行きます。」
チラッと中庭を見るとあの2人はもう既に居なくなっていた。ここに残る意味も無くなった、と紗枝は踵を返して歩き出す。
「まぁ〜精々足元を掬われないことだな。」
紗枝の背中に向かって言葉を放つ。それは忠告か。警告か。情けか。慈悲か。何れにせよ響は紗枝の身を案じた訳ではなく、ただの気まぐれで言っただけだろう。