魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「いまは紗枝が凛先輩を独り占めしてるんで邪魔しないで欲しいです!」





ニコッと笑って作業しながら言う彼女の目がギラついたことに気付かず、凛は微笑ましそうに眺める。





「紗枝は凛先輩の声が好きなんです。」

「声?」

「そうですよ。」





それはいつの日だったか、誰かに聞いたことのある言葉だった。





「凛先輩の声を聞いてると頭の中がぐるぐる回って何も考えられなくなるんです。心地好くて、穏やかで。同時に渦巻くんです。」

「、何が…?」





恐る恐る聞く。知りたいようで、知りたくなかった。


“誰か”を変わらせてるのは彼女の云う“声”のせいなのかもしれないと思ったからだ。


凛の心情に気づいてるのか、いないのか。紗枝は優しく微笑むと、ゆっくり口を開いた。





「凛先輩を、殺したいなぁって。」





――…息を、呑んだ。
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