魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
絶句する凛。
可愛らしい紗枝の口から、まさかこんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「あはは!冗談ですよ〜!真に受けないでください!紗枝は思ってないですから!」
「……」
紗枝は気づいているのだろうか。その言い方だと紗枝は思わずとも“誰か”は思っていることになる。凛は言い知れぬ不安に駆られた。
「紗枝は凛先輩を――――…」
もはや紗枝の声なんて耳に入って来なかった。
「(こえ?声が、駄目なの?この声が無かったら、あんな目に合わなかったの?何で、私が、)」
平凡に生きてきた筈なのにいつの間にかとんでもない事に巻き込まれている。
自分の周りでめまぐるしく起こる出来事に凛は耐えきれず、自分の喉を引っ掻いた。