魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「きゃあっ!」
喉を引っ掻いていた手を引っ張られて身体を土の上に叩き付けられた。土は柔らかく痛みは無かったが突然襲った浮遊感に悲鳴を上げる。
凛は身体を起こす間もなく土の上に押し倒された。
「痛…っ」
手首に食い込んでくる爪とあまりの握力の強さに凛は顔を顰めた。そして自分の上に伸し掛かる少女を見る。
「紗枝ちゃっ、」
「なに、やってるんですか?」
ギリギリと力が籠る。自分よりも小さい彼女にどうしてこんな力があるのか、と頭の傍らで思った。
凛はこの状況が理解出来ずに居た。なんで紗枝に押し倒されているのか。なんで圧力を掛けられているのか。何もかも凛には分からなかった。ただ1つ、紗枝が怒っていることだけは、分かった。