魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
扉越し、だったからなのかもしれない。
少しばかり反抗心が芽生えたのは。
扉を隔てた向こうに居る響の姿が曖昧だったから言ってしまった。
『幹久先輩の方が優しい…』
そうポツリと呟いた。
今日優しくしてくれた幹久の温もりを凛は思い出して寂しくなった。きっと幹久なら自分の言葉を聞いて尊重してくれると思った。
彼の優しさを思い出し、ぶるッと身体が寒さで震える。シャワーを止めると傍に置いていたタオルを身体に巻き付けた…
そのときだった。
――――――バァン!
『ひゃっ!』
豪快に扉が蹴破られたのは。