魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「ナツ君?勝手にヒトの所有物に手ェ出しちゃあ、駄目でしょ〜よ」
背後でクツクツと笑う“彼”に、面倒臭そうに溜め息をつくと捺は凛を離して振り返った。
「響か、」
“響”と呼ばれた男子生徒は捺に近づく。
「捺何してくれてんの?俺のだけど?知ってるよね?知ってて触るとか良い度胸してるじゃねえの」
「落ち着け。ウザい」
「前も同じこと言ったんだけどな〜。あの忠告忘れちゃった?捺君超お茶目〜。忘れて貰っちゃ困るぜ」
捺に聞く耳を持たない響は持っていた小型ナイフを取り出すと捺の頬に宛がった。
ツ――……と捺の頬から赤い血が滴る。
「殺すぞ」
捺と凛を遮るように、血が付いたナイフを机に突き刺す。
ダンッ!と大きな音を立てて小型ナイフは深々と机に突き刺さった。