魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−






真横に突き刺さったナイフに凛は肩を揺らした。凛の潤む瞳を見て響は嬉しそうに口元を歪めた。





「ほん〜と可愛い」

「……ッ」





覆い被さるように、凛をゆっくりと抱き締めた響は震える瞼を舌で舐める。相変わらず妖艶な男だ。



舌の感覚に凛は肩を大きく揺らすと唇を噛んだ。





「……凛」





“へ”の字にする凛の唇に人差し指を当ると無理矢理抉じ開ける。





「凛。名前」

「……、びき」

「だ〜め。ちゃんと読んでくれねえと許さねえよ?何無抵抗に捺に抱き締められてんの?凛チャン」

「ッ、あれは、ちがっ」

「俺はバッチリ見てんだよね〜。凛が捺の背に手を回してるとこ。あ〜あ。俺の凛が穢れちゃった。俺の心も傷ついちゃったじゃねえの。もう生きてけねえわ」

「なら今すぐ失せろ」

「はいはい。捺は黙ってよ〜ね」





机に刺さっているナイフを抜くと笑顔でナイフをちらつかせ、脅迫する。冗談半分の脅しではないから恐ろしい。まず此の男は何故、小型ナイフを所持しているのか…
< 17 / 317 >

この作品をシェア

pagetop