魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「凛先輩は気にしないで下さい。」

「え…?」

「凛先輩のせいじゃないですから。」





儚い笑みを浮かべて言われた凛は目を見開く。『もしかしたら、』と自分を責めていたことを紗枝には見透かされていた。





「でも…」

「きっとお兄の不注意ですよ。不良に喧嘩売って返り討ちにされたんじゃないですか?」





戯けたように言う紗枝に凛の目頭は熱くなる。不安なのは紗枝の方なのに、と。どこまでも紗枝は凛を気遣う。目の下にある隈が凛の目頭を更に熱くした。
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