魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「それに…紗枝には分かるんです。」
目を伏せてテーブルをジッと見つめる。いきなり雰囲気が変わったことに凛は目頭の滴を拭いながら首を傾げた。
「紗枝ちゃん?」
「紗枝は知ってます。」
「なに、を?」
「紗枝は…紗枝は…」
小さい声でぶつぶつと呟く紗枝を怪訝な面持ちで見つめる。そして紗枝は顔を上げると何らかの決意を宿した目で凛を見た。
「響先輩です。」
「え?」
「響先輩なんです。」
響の名前を連呼する紗枝にイヤな予感がした。
的を付かない紗枝に凛は恐る恐る『響が、何?』と聞き返す。
そしたらやはり、イヤな予感は当たっていた。