魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
言葉を被せられた紗枝はカッとなり立ち上がった。テーブルの横にある胡椒や塩が揺れ、造花がポトッと落ちた。
「響先輩です!お兄が邪魔だから消そうとしたのよっ!」
身を乗り出して叫ぶ紗枝を他のお客はじろじろ見る。その目には好奇心。まるで動物園の檻に入れられた気分だと凛は思った。
紗枝を宥めようとしたとき。
タイミングが悪いのか良いのか、先ほどの店員が遣ってきた。
「御待たせ致しました。」
コーヒーとミックスジュース。そしてレアチーズケーキをサッと置いて営業スマイルを浮かべる店員。
急に現れて流れ作業のように仕事をこなす店員にいきり立つ紗枝もポカンとした。