魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「紗枝ちゃん、響はそんなこと、しないよ?」
「何でそんなこと言い切れるんですか?」
「それは…」
「紗枝が信用、出来ませんか?」
ケーキから目を逸らして凛を見つめる。悲しげな、寂しげな、その瞳に、凛は戸惑ってしまった。
何が真実で、何が虚実なのか、凛は分からなくなる。
「…紗枝ちゃんを否定してるつもりじゃないの。」
何も紗枝が言ってることを嘘だと思うつもりはない。ただ、凛は響を信用したいだけだった。
信用しているわけじゃなくて信用“したい”
そう。何も凛は確実に響を信用しているわけじゃない。
心のどこかでは疑ってる自分がいるから、こうも揺らぐ。紗枝に痛いところを疲れた凛は、迷ってしまった。響を信じると決めた傍から――――彼 を 疑 っ た 。