魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
此の脅しが冗談では無い事くらい長年の付き合いから察した捺は、溜め息を付くと椅子から立ち上がる。
「あ、捺チャンは気を利かせてくれんの?悪いね〜。気兼ねなく凛とイチャラブしようじゃねえか。今までKYな男だとばかり思ってたぜ」
「凛、行くぞ」
「前言撤回。やっぱオメエはKYだ。スーパーでウルトラ級のKYだ。凛と俺を引き裂く奴は死ね」
「お前がな」
放送室の入り口付近に立つ捺と、凛を抱き締め離さない響は睨み合う。両者互角の凄まじさ。
この2人は昔馴染み。しかし凛のことになると犬猿の仲と化する。
「…“響”」
凛は、響が着ているベージュ色のセーターを引っ張ると怖ず怖ずと呼び掛けた。