魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「いたっ!」
落としてしまったガラスのコップの破片で凛は指を切る。ニコニコと笑顔の女の子が描かれたコップは粉々に―――砕けた。
地味に痛いと指を押さえる。
白く細い指から流れる血。
「大丈夫?」
「う、うん。」
一部始終を見ていた捺はしゃがみ込む凛に近寄る。凛と同じ目線に屈むと、その指を掴んで口に含んだ。
「えっ、ちょっ、」
血を吸う捺にあたふた。痛い筈なのに変な感覚に陥る。含んだ血を吐き出さない辺り捺は血を飲んでることに気付いた。