魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
彼女は至って普通の女子高生だった。成績は常に平均点。運動はそこそこ。黒髪黒眼の純日本人。特別可愛い訳ではない。よく見れば周りより目鼻立ちが整っているだけの本当に何処にでも居る平々凡々な少女。



何も彼女が変わり者と言う訳ではない。彼女の周りに居る人物が変わっているだけ。



周りが彼女に向ける目は少し異常だった。しかし異常の中に“異常”が埋もれれば“異常”なことに気づかない者もいる。



人を隠すなら人の中。異常を隠すなら異常の中。徐々に“異常”が“正常”だと思わされる此の定義。


自分が異常なことに気づいていない者は一体何れ程居るのか。また少女自身もそれに気が付かない。知らず知らず毒を撒き散らす。



その魅惑的な声で。



少女には周りより優れたモノが1つだけ存在した。



それが“ボイス”



少女の声は正に天の美禄。



人を惹き付け、魅力し、陥れ、狂わす。



少女は崇拝される。少女は愛される。少女は狂わす。少女は惑わす。少女は崇められる。少女は奉られる。少女は執着される。少女は溺愛される。少女は愛に溺れる。少女は、愛されすぎたんだ。度が過ぎた愛を与えられた。



平常の愛が欲しいなんて今更だった。少年の愛を少女の愛を、彼女は自らの声で狂わせてしまった。



幾ら喉を引き裂いても魅惑ボイスは彼女の1部。ゆえに消えない。揺るがない。そして魅惑のボイスに人々は魅了される。



(ほら。)
(また1人、)
(狂う。)



少女は、


魅惑のボイスを持つ少女は、










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