魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
しかしまだ放送委員会の役割が終わってないので時計と放送機器を見比べる。あたふたする凛を見兼ねた捺は口を挟んだ。
「俺が遣っておく。」
「…あ、」
「帰っていいよ。」
「…う、ん。」
先ほどのことを思い出して捺と目を合わせづらい凛はしどろもどろに頷いた。
「あ、ありがとう。じゃお先に。」
俯く凛は手探りで鞄を手にすると、今頃凛を持ち詫びてる兎の元へと向かった。
一向に自分と目を合わせず俯いたまま放送室を飛び出した凛を見て口角を上げた捺を見たのは真葵だけだった。きっと今頃、頭の中は彼じゃなく自分のことでグチャグチャだと思うと、愉快過ぎて堪らなかった――――…。