魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「袖に血付いてる。」

「ん?」





捺に言われて真葵は袖を見遣る。


袖を見ると赤く染まっていた。


しかし『拭く』のは無理だった。何故なら、血は染み込んでいて拭いても汚れは取れないからだ。





「ああ。これか。ふふ。邪魔者に裁きを下しただけさ。」





血を恍惚と見る真葵。


悪びれもなく裁きを正当化する。





「いつか仕返しで襲われたりして。」

「んふふ。もう襲われたさ。」

「…ああ。」





そう言えば入院してたんだっけ?と捺はぼんやり思い返す。


病院側が手を焼くほど真葵の脱走癖は酷かったらしく呆れたことが脳裏を過った。
< 203 / 317 >

この作品をシェア

pagetop