魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「ん?凛さっきまで居た?」
「ほんの数分前までね。」
「やっぱり。まだ凛の匂いが残ってる。」
「…どんな嗅覚してんの。」
凛が座っていた椅子の匂いを嗅ぐ響を蔑むように見る捺。仕舞いには凛に餓えた響は椅子に頬擦りをしている。ドン引きするのも無理はない光景だった。
「はぁ。ムカつく。」
――…ギィ
凛の椅子に飛び乗るように座ると響は机に足を乗っける。凛が居れば注意するだろうが、ここに態々咎めるものは居ない。
そして頭の後ろで手を組んで背凭れに凭れ掛かり、響は偉そうに踏ん反り返る。