魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「ただ灸を据えただけか。」
「灸を据えただけで半殺しとはオメエも野暮な男じゃねえの。」
「おや。見てたのかい?」
「勘だ、勘。」
態々警告や忠告なんて生温いことをこの男がする筈ないと理解している響は言った。
捺は裾以外に裾に付いた血を見る。制服は赤茶のズボンなのでよく見なければ分からない。しかしよく見れば…
「その夥しい血は?」
「んふふふふ。」
「…」
何か言えよ。と冷めた目で真葵を見る。
ニマニマと笑うだけ真葵は血の出所を答えない。しかし態々聞かなくとも分かる。察せないほど捺と言う男は馬鹿ではなかった。