魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「ああ…もう…っ…」
夢から逃げようとした途端現実でこの有り様。凛はカーディガンを抱き締めたまま、体重をゆっくりと前に掛け、ベッドに額を付けた。
「…うっぇ…ひっ、ぐ…」
込み上げてくる涙を必死に押さえようとするが、逆に溢れだしてきた。止めどなく溢れる涙でシーツが濡れていく。
身体の感じからすると未遂だろうと凛は泣きながら考える。
「だれ…だよっ…ばかぁっ…」
今まで押さえてきたものが一気に込み上げてくる。ここまで我慢している自分に馬鹿らしくなった。
そしてマーキングを散らばした“誰か”の胸ぐらを凛は今すぐにでも掴みたくなる。