魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
行き場のない怒りと悲しみと喪失感。こんなことをする“誰か”に凛は悔しくてシーツを握り締める。
入り交じる感情をぶつけるように凛はベッドを殴る。
何度も。
何度も。
拳を振り上げては、下に落とした。
その度にギシギシと鳴るベッドの音さえ凛を不愉快にさせる。
「…っあ…やま…っ…てよぉ、」
“誰か”を罵倒したかった。
今まで誰かを罵る事が無かった凛がそう思ったのは初めてだった。
これ迄の出来事が積み重なり、いつもふんわり微笑んでいた凛が、崩壊した。凛を追い詰める“誰か”の手によって。