魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





行き場のない怒りと悲しみと喪失感。こんなことをする“誰か”に凛は悔しくてシーツを握り締める。

入り交じる感情をぶつけるように凛はベッドを殴る。


何度も。


何度も。


拳を振り上げては、下に落とした。

その度にギシギシと鳴るベッドの音さえ凛を不愉快にさせる。





「…っあ…やま…っ…てよぉ、」





“誰か”を罵倒したかった。


今まで誰かを罵る事が無かった凛がそう思ったのは初めてだった。


これ迄の出来事が積み重なり、いつもふんわり微笑んでいた凛が、崩壊した。凛を追い詰める“誰か”の手によって。
< 222 / 317 >

この作品をシェア

pagetop