魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





「ただ猫に引っ掛かれた、とぐらいに思っている。」

「ね、猫って…。手術までしているのにそんな可愛いもので済ませないで下さいよ。」

「だが昔からアイツは凶暴だった。口より先に手が出るヤツだからな。殴る蹴るは当たり前だ。」

「う、うそ…」





凛のなかの“紗枝ちゃん”がまたもやガラガラと崩れ落ちる。凛が紗枝に幻想を抱きすぎていると言うのもあるが、紗枝の本質も意外過ぎて唖然とする。





「だから今回見物に回ったのは、正直意外だった。だが態々アイツが誰かと手を組んで俺を襲ったのは、ただ単に俺にバレるのを危惧したからだろう。」

「“誰か”は……誰なんでしょうか?顔は、」

「見てない。見てたらとっくに叩き潰している。アイツに気をとられ過ぎた。」





怒りが込められた声を聞き、幹久とて内心穏やかな訳ではないことを凛は知る。それなりの怒りを内に潜めていた。
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