魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
まさかその暴力事件に自分が絡んでるとは思いもしないだろう、と凛は申し訳なくなった。
しかし事実を言ったところで村上先生は笑い飛ばすだけ。きっと、凛を責めることはない。
「これを気に転勤の話を蹴って地元に戻るだけだ。教師を止めたのは誰かのせいじゃねえ。だから気に病むなよ。」
「―――‥え」
含みのある言い方に凛はキョトンとした。ジッと村上先生を見つめ返すが、ただ彼は爽やかに笑い、凛の頭に手を乗せるだけ。
村上先生は全部知っているのではないかと、凛は思った。
「まさか、ね。」
「ん?どうした?」
「い、いえ!何でもないです!」
思わず呟いてしまった凛は慌てて誤魔化す。