魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





最近色々あったため、課題なんてすっかり頭から抜けていた。ただそれだけ。しかし『色々あった。』と軽々しく言えることではなく凛は言葉を濁しながら誤魔化した。





「…村上先生はどうして学校に?」

「俺か?」





わざとらしかったかもしれない、と懸念しながらも凛は聞く。





「俺は忘れ物を、な。」





爽やかに笑いながら言った村上先生。しかし肝心なところは曖昧にされたため凛は小首を傾げる。それはただ、何気無い疑問だった。





「忘れ物を取りに来たんですか?」

「いや。逆だ。」

「逆?――――置きに?」





キョトンとして言った凛に村上先生は否定しなかった。しかし肯定もしなかった。ただ笑うだけ。


もしかして聞いたらイケなかったのかもしれない。と思った凛は、気まずそうに目を逸らした。
< 252 / 317 >

この作品をシェア

pagetop