魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
***
――――――「ここも見納めだな。」
「寂しいですね、」
「はは。そう悄気るな。」
あからさまに項垂れる凛に、村上先生は笑った。
かなり校舎を徘徊してやっと着いた教室。普通なら数分で着ける教室も、最後だからと言う村上先生のために遠回り。数十分掛けて、漸く教室に辿り着いた。
凛はドア付近で、教壇に立つ村上先生を見る。
「よし!行くか。」
「え!?も、もう行くんですか?」
「新幹線の時間も有るからな。」
「あ、」
教室を見て満足気に頷いた村上先生は教壇を下りて凛が立つドアに近寄る。
悲しみに暮れる凛の目線に合わせると、爽やかに笑った。