魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「紗枝ちゃん!」
俯いていた凛は顔を上げ、パァッと笑顔を浮かべた。走り寄る紗枝の手にはお弁当。この日、二人は共に昼食をとる約束をしていた。
「お待たせしました!今日のは、スッゴい自信作なんですよ!」
ジャーン!とお弁当を見せびらかす紗枝。しかしそのお弁当は、女子が持つ一般的な大きさではなく重箱だった。それを見た凛は申し訳なさそうに眉を下げる。
「な、なんかゴメンね?」
「何言ってるんですか!紗枝が好きでやってるんです!手作りを食べて下さいって言ったのも、紗枝なんですから!凛先輩は気にしないで下さい!」
「う、うん。」
紗枝は凛に手作り弁当を食べて欲しくて、決して二人分の量とは言えないお弁当を持参した。
それは今に始まった事ではなく、凛と昼食を共にする度に紗枝は、お弁当を作ってきている。