魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「……………ひ、びき」
相変わらず気怠そうに突っ立つ響。しかしその手には白濁の液体が入った小瓶。それを誰かの下駄箱に入れようとしていた。
レンズが合わず、ブレているが、間違いなく響だった。
それさえ身に覚えのある物で凛は目を見開いたまま固まった。
「何で」
どれも、信じられないものばかりだった。
「何で何で何で」
目を見張ったまま首をふるふると横に振り、凛は否定する。
「何で何で何で何で何で何で何で何で何で、
何でなの!?」
写真は、宙に放り投げられた。
「嘘だ
こんなの、合成に、
決まってる。」
誰かが作ったものだと凛は呟いた。投げ捨てた写真はひらひらと宙を舞い、寂しく床に落ちる。