魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
しかしこの光景が“そう”なのだと我に返る。
凛は自分の目で確かめたかった。これ迄の真相を。そして彼等の真意を。今から何を仕出かすのかを。
紗枝が来よう企んでいた場面に凛は赴いている。こんな危険なことに足を突っ込もうとしていた紗枝に、凛は頭が痛くなった。
頭を押さえていると彼等の声が耳に届き、ハッとする。
「そう熱り立たないでくれ。僕は争い事が嫌いだ。正当防衛だとしても無闇に暴力を振るいたくはない。」
溜め息をつきながら真葵はわざとらしく肩を竦めた。あまりにも、わざとらしすぎる真葵に冷めた目を向ける捺は、フードのヤツを見ながら言う。
「よく言うよ。ボコボコにしやがった癖に。見ろよ、あの顔。」
「良いじゃないか。整形に失敗したような顔だが、以前より格段に格好良くなった。お礼を言って欲しいくらいだ。ふふふ。」
皮肉を込めた真葵は、怪しげに目を三日月型にした。