魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
下げた足がたまたま、落ちていたコーヒー缶に当たった。そのままコーヒー缶はゆっくり転がり壁にぶつかる。その音は結構大きく、凛は目を見開いて固まった。
「(やって、しまった…)」
息を呑んでコーヒー缶を見つめる。
そしてギュッと目を閉じて俯いた。どうか気付かれていませんように、と。先ほどより凛の神経は研ぎ澄まされている。
「あ?」
凛の耳に響の訝しげな声が届く。
「…っ」
その地を這う低い声に悲鳴を上げそうになった凛は口元を両手で覆う。身体をガタガタと震わせながら、目を瞑った。