魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−






「―――‥っ」





咄嗟に口許を押さえる凛。真葵と響の傍で項垂れる男を見て、目を見開いた。ボサボサの黒髪に、光のない黒目。どんよりした隈。露になった男はお世辞にも小綺麗とは言えなかった。


見えた素顔と知ってしまった真相にショックを受けていると思った周囲の人間。その“ショック”は彼等にとって計算通り。


凛に真実を叩きつけて悲嘆の淵に沈ませることが目的だった。


“邪魔者”と絶縁させるように仕向けたのだ。
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