魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





真葵と響、そして凛が屯しているところに数人の警察官を引き連れた捺が遣ってきた。





「××君のお姉さんですか?」

「ああ。」





凛に変わって響が頷く。


しかし凛は口許を抑えたまま首を振る。モザイクが掛かったように名前が聞き取れない。


首謀者が弟?


その姉?


首謀者と被害者が姉弟?


“恐怖で”声が出ない凛を響は優しく抱き締めた。


目を見開いたままの凛は頬に何かが触れたことに気付く。曇り空を見上げれば――――ほら、また。頬に触れたのは雨の雫だった。


ポツポツと雨が降ってきて頬だけに止まらず髪や身体を濡らした。


降り注ぐ雨の音、狂った叫び声、怒鳴り声、耳元で囁かれる愛の言葉を聞きながら、凛はただ、漠然と雨に濡れた―――――‥。






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