魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
「――――ふざけた事を、よく言いますね。」
静かに言う“弟”は気味が悪い。俯いている“弟”の顔は見えない。だがコイツの声はどこか耳鳴りがする、と響は顔を顰めた。
「あまり、怖がらせないで下さい。」
響は目は一瞬にして冴えきった。
「何言ってんのか、よく分かんねえわ。」
「また惚けた事を。全く君達は熟僕を不愉快にさせる。いい加減、目障りだ。」
『コイツは一体何なんだ』と響は思う。
コイツは確かに“君達”と言った。何故知っているのか。どこから情報が零れたのか。と頭を捻る。
コイツが言う俺達の“罪”はどれを差しているのか。だが、この男は全てを差しているようで、響は僅かに悪寒がした。
まだ凛さえ気付いていない居ない事を“弟”が知っている。それは“見ている”から気付けた事だ。