魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
口調がやや乱暴になった“弟”は踵を返す。どこに行くのかと思ったが追求しようとは思わない。響はフードで顔を隠したままの“弟”の背中を射るように見る。
「あまり、調子に乗るな。」
ポケットのなかに手を突っ込み、“弟”は言う。そのとき僅かに、キラリと光った銀色の“何か”。それはよく響が持っているものと極似していた。
そう言って目の前から去る“弟”に響は唇を噛み締めた。後ろから襲う算段も頭の中で練っていたが、必死に自分の中の魔の感情を抑えた。