魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
癖のある厄介な妹に内心溜め息を付きながらも、兄は話に乗ってやる。
「ああ。芋は嫌いだ。と言うより甘いものが苦手だ。だからそれは凛が貰ってやれ。」
「そうです!紗枝はお兄なんかに渡すために作ったんじゃありません!凛先輩に食べて欲しくて愛情を込めたんですから!」
紗枝の言葉にハッとする。
「…そうだよね。私のために作ってくれたんだもんね。ごめんね?このスイートポテトやっぱり私が貰っても良いかな?」
「はい!大歓迎です!貰って下さい!寧ろ紗枝ごと!」
紗枝はぎゅーっと凛に抱き付く。凛はスイートポテトを潰さないように庇いながら、紗枝を受け止める。
この微笑ましい――か、どうかは分からないが、元に戻った空気に幹久は安堵する。世話の焼ける妹を持つ兄は大変のようだ。