魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
何度やっても校内アナウンスは緊張する。
そう思った黒髪の女の子。何事もなく1日の放送業務を終えたことに胸を撫で下ろす。
「―…緊張した、」
女子生徒は胸元に手を当てると顔を綻ばせた。
そして小さく意を呟く。
校内アナウンス同様、やはり少女の声は美しかった。
「お疲れ」
「捺君…」
「あげる」
「ありがとう」
横に座っていた男子生徒を“捺”と呼ぶ女子生徒。
捺から手渡されたカフェオレを握ると優しく微笑む。少女の笑顔を見た捺の表情も僅かに和らいだ。