魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
凛は血に染まらない手でスクールバックを漁ると、ペットボトルを取り出した。
中々開かない蓋に苛立ちながらも血に染まった右手に、水をぶちまける。
近くに置いてあったタオルで何度も手を拭くと、そのまま鶏を隠すようにタオルを被せた。
睨み付けてくるように此方を見る鶏が恐くて、見たくなかった。
凛の手はいまだに痙攣したように震え、息が絶え絶えだった。
「…っはぁ…ふっ」
僅かに息苦しくて必死に“呼吸”を繰り返す。呼吸の仕方を忘れたようにゆっくり息を吸う凛。
そして不意に凛の耳に届いてきたのは扉を荒々しく叩く音。