魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
凛は恐る恐るタオルに手を掛ける。端っこを摘まみ少しだけタオルをズラして見るが――――やはり血塗れの死骸だった。
目を開けたとき夢ならどれだけ良かったか。何度見ても鶏の死骸に変わりなかった。
あきらかに意図的に殺された鶏。本来ある目も翼も喪われている。
これは、死臭らしい。
初めて見る“殺し”がまさかこんな酷いものだとは、凛自身、予想もしていなかった。
“死”は間近に潜んでいる。昨年お爺ちゃんが天国に逝ったばかりだ。そのとき“死”と言うものを凛は目の当たりにした。