魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
ずっと…
ずっと気づいていた。
開けたときから。ずっと、
でも信じたくなかった。
気づきたくなかった。
鶏に気が取られ、
写真に気が取られ、
ほんの僅かに“それ”の存在を忘れていた。
だけど段ボールを見たら嫌でも“それ”は目に入ってくる。
恐る恐る凛は“それ”に手を伸ばす。血だらけの段ボールのなかにあった“それ”は凛が持ち上げると『ピチャッ』と音を立てた。
「ひ…っ!」
“それ”から滴る血の音に身の毛がよだつ。
血が滲む“それ”に書かれた文字に恐る恐る目を通す。 赤い文字は血のせいなのか、 元からなのか、 よく解らなかった。