魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





それを理解している凛は何度も手を洗った後、殺菌スプレーを振り掛け、消臭スプレーを振り撒いた後、段ボールを持ち上げる。


そして玄関に向かって靴を履いた。

あまりの騒がしさに母はキッチンから顔を覗かせる。





「もう!凛!?今度は何なの!?どこに行くの!ご飯は!?」

「後で食べる!」





それだけ言うと凛は家を飛び出した。食べると言ったもののきっと食べないだろう。寧ろ吐いてしまう。脳裏を過るのは、 抉れた眼球、 折れた足、 散らばる羽、 突き刺さるナイフ、 鮮やかな赤――――――‥





「おえっ、ゴホッ」





段ボールの中身を思い出すだけで吐き気が襲う。走らせていた足を止めると、電柱に手を付き、胃の中の物を吐き出す。
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