魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
込み上げてくるモノに耐えきれなかった。口の中に酸味が広がり、口を濯ぎたくなる。
しかしこの段ボールをどうにかしない限りこの状況は変わらない。吐き気も、治まらない。
重たい足を動かして凛はある場所へと向かう。
走る度に、ガサガサ、ゴソゴソ、と鳴る音は鶏の死骸が動いてるからだろうか。震動に合わせて揺れる段ボールにそんなことを考えてしまった。
――――そしてまた吐き気が襲う。
一体どれだけ吐き気に見舞われれば気が済むんだろう。と凛の目からは生理的な涙が零れ落ちる。
「…ううっ、ひっ…くっ、」
涙でグシャグシャに歪められた顔のまま足を進める。
止まることは許されない。と言うより、凛は止まれなかった。恐怖に苛まれ、足を動かしていた。ただ“これ”を遠ざけたい一心で――――――――‥