魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−
手で穴を掘ると段ボールの中身を埋める。段ボール箱は後で焼却炉にでも要れておこうと決めた凛は、ひたすら隠蔽に力を注ぐ。
爪に泥が入ったとか気にしていられなかった。タオルも紙も写真も。全部。全部。全部。穴のなかに隠すように放棄する。
そして土を元の状態に戻した凛は立ち上がると、息を切らしながら呟いた。
「……これで、」
『大丈夫。』と凛は頷いた。
悪夢はもう、土の中。自分を苦しめるものを埋めたことに安堵する。
それと同時に、ドッと疲れが押し寄せる。決して平らではない丘を登ったことで凛は既に、疲労困憊だった。