魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−





陽は沈み、辺りは薄暗い。


時折聞こえるカラスの鳴き声は、ホラー映画さながら。夜の山ほど不気味だと凛は身震いした。


『さっさと帰ろう。』と踵を返すが何かを思い巡らして丘を下りる足を止める。


そして近くに生えていた野花を取ると埋めたところに添えた。





「ごめんね…」





『もしかしたら鶏は自分のせいで殺されたのかもしれない。』


その憶測が蟠りとなり凛を思い煩わせた。あれほど吐いて見ることを拒否した鶏に一輪の花を携える。それだけ申し訳なさで心が押し潰れそうだった。


顔に苦渋の色を見せる凛は花を置いた後背中を向けて来た道を引き返す。
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