一夜花
華夢
 午後は『自主休講』にした。バイト先にも休みの電話を入れる。
こんな特別な夜に発泡酒は似合わない。少し奮発してビールをパック買いで、それに乾き物を少し……
 
安アパートの畳に買い物袋を下ろした浩一が、窓際の鉢を確かめる。
 茎の先に下がったいくつかの蕾は、浅い昼寝を楽しむかのように閉じていた。

その一蕾に触れれば、白いふくらみは微かな柔らかさで開花が近いことを告げている。

 涼しい風が吹き始める夕刻になれば、その蕾は静かに星を仰ぎ見る。
甘い香りを強く放ち、花粉を運ぶコウモリを呼び寄せるために……

「今夜は俺がコウモリになってやる。綺麗に咲いてくれよ」
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