きみと風になる
よそ見運転の車に撥ねられて右足の靭帯を損傷したのは2か月前。

‘また走れるようになる’

疑心暗鬼なのは、医学を信じてないからじゃない。

私より速く走れる人は他にもいる。

とっくに感じていた限界。
誰にも悟られたくなくて、ろくにリハビリもせず復帰を長引かせている。

体勢を入れ替えた智也の抽挿が再び始まる。

いつも場当たり的な智也に、愛想が尽きて別れのタイミングを窺っていたけれど、卑屈な私には適役なのかもしれない。

おざなりに扱われると、自分が風になれた日のことは、もうずっと遠いことのような気がした。
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